九州地区例会
公開研究会「ミャンマーからタイ、マレーシアへの移動者の諸相」
ミャンマーはコロナ禍の中で起きた政変以降の混乱によって、人口の
国外流出圧力が嵩じている。本研究会は、移動先として圧倒的に重要
なタイ、マレーシアを対象に、ミャンマー移民の実態に迫るとともに、
制度的枠組や移民ネットワークの機能を検討する。
*本研究会は、科学研究費(基盤研究B)「政変後ミャンマーの国際労
働力移動:受入4ヵ国の制度比較と移民ネットワークの再評価」(研究
代表者:水野敦子、23K28313)の助成を受けたものです。
【日時】2024年9月28日(土)14:00-17:00
【会場】九州大学 西新プラザ 多目的室
〒814-0002 福岡市早良区西新2-16-23
https://nishijinplaza.kyushu-u.ac.jp/access.html
【プログラム】
14:00-14:40 第1報告「マレーシアにおけるミャンマー人労働者:
正規と非正規を跨ぐ移民システム」
水野敦子(九州大学)
14:40-14:50 コメント 篠崎香織(北九州市立大学)
14:50-15:20 質疑応答・ディスカッション
(休憩)
15:40-16:20 第2報告「チェンマイ在住のパラウン(タアン)人コミュニティ
に関する中間調査報告:シャン州チャウッメー県H村出身者を事例に」
生駒美樹(東京外国語大学)
16:20-16:30 コメント 藤田幸一(青山学院大学)
16:30-17:00 質疑応答・ディスカッション
【報告要旨】
第1報告「マレーシアにおけるミャンマー人労働者:
正規と非正規を跨ぐ移民システム」
国連移民統計によれば、マレーシアにおける移民は、2000年から2020年
にかけて、146万人から348万人へ2.4倍増加したが、同期間にミャンマーか
らの移民は1.9万人から35.1万人へ18.2倍増加した。移民の増加要因は、経
済成長に伴う労働力不足と外国人労働者の流入増加である。マレーシアでは
外国人労働者が不可欠な存在となって久しいが、非正規移民が問題となって
きた。急増したミャンマー移民も半数以上が非正規移民である。しかし、非
正規移民は、その属性故に実態把握は困難であり詳細に不明な点も多い。そ
こで、ミャンマー人労働者の正規と非正規就業が併存する実態とその要因を
明らかにすることを本報告の目的とする。
ミャンマーは2021年の政変以降、人口流出圧力が高まっている。マレーシ
アにおけるミャンマー移民は、増加が著しいだけでなく、正規移民と同程度
あるいはそれ以上の非正規移民と難民・庇護希望者が存在している点に特徴
がある。ただし、マレーシアは「難民法」未批准のため、難民・庇護希望者
はマレーシア国内で法的地位を与えられず非正規移民とみなされる。ミャン
マー移民の法的ステータスは多様で、正規と非正規移民は固定化しておらず
流動的でその境界は曖昧である。この境界の曖昧さは、マレーシアの受入制
度や外国人労働市場のみならず、ミャンマー移民の属性にも依存する。本報
告は、ミャンマーとマレーシアで実施してきた現地調査に基づき、マレーシ
アにおいて正規と非正規の境界が曖昧なミャンマー人労働市場が形成されて
いる要因について、両国に跨る移民システムに着目して分析する。
第2報告「チェンマイ在住のパラウン(タアン)人コミュニティに関する
中間調査報告:シャン州チャウッメー県H村出身者を事例に」
2021年のミャンマー軍事クーデター以降、タイではミャンマー移民が急増
している。本報告では、チェンマイ在住のパラウン人(モン・クメール系)
を事例に、多様な背景や法的ステータスを持つミャンマー移民の実態を民族
誌的データから示すことを目的とする。
本報告では、シャン州チャウッメー県H村出身のパラウン人の事例を取り上
げる。H村は300世帯、人口1817(2019年)村で、このうち100人以上が2000年
代半ばからチェンマイに移住している。2024年末以降も、「1027作戦」
(ミャンマー少数民族勢力が軍事政権の打倒を目指し10月27日に開始した軍
事作戦)の戦禍を逃れて30世帯以上が新たに移り住んできた。彼らの多くが
チェンマイ最大の生鮮市場ムアンマイ市場で食品の販売業や運搬業に従事し
ており、市場の北には彼らが集住する地域がある。
本報告では、2023年から2024年にチェンマイで実施した調査に基づき、彼
らの移住背景及び移住後の法的ステータスと就業実態について報告する。ま
た、移住や就業、生活の場面において村落や民族のネットワークがいかなる
機能を担っているのかを明らかにする。さらに、現在のH村の状況について
も報告する。
【参加申込方法】
参加を希望される方は、 ≪9月26日(木)17時≫ までに
Googleフォームからお申し込みください。
GoogleフォームのURLまたは参加申し込み方法は下までお問い合わせください。(東南アジア学会情報化担当追記)
【問い合わせ先】
九州地区理事 篠崎香織 YRJ02374[at mark]nifty.com