京都大学東南アジア地域研究研究所では下記の要領で東南アジアを対象にした短
編ドキュメンタリー映像作品の上映ならびにトークイベントを開催します。
「死と生と」をテーマに東南アジアから応募された短編ドキュメンタリー作品の
中から、厳選した5作品を日本語字幕付きで12月10日(金)よりオンラインにて
上映します。あわせて、各地域の社会・映像の専門家によるコメント動画を配信
します。また、12月18日(土)に各作品の監督をゲストに迎えたトーク・イベン
ト(日本語通訳つき、要事前登録)をオンラインにて開催します。
ふるってご登録・ご参加ください。
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第10回 Visual Documentary Project
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■オンライン上映
2021年12月10日(金)午後3時より下記HPにて配信を開始します。
https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/vdp/vdp2021/
■オンライントークイベント
・日時:2021年12月18日(土)午後4時~午後6時
・参加方法:下記URLより事前に参加登録ください。
https://tinyurl.com/muap6uhc
※12月16日午後5時までにご登録ください。
・言語:日本語(英語とベトナム語の通訳あり)
・主催:京都大学東南アジア地域研究研究所
詳しくは下記を参照ください。
※トークイベント内では作品並びに専門家によるコメントの上映はいたしま
せん。作品並びにコメントは、事前に各自でご視聴ください。
■入選作品
1.「ドラム・レボリューション/Strike with the Beat」
(サイチョーカイン監督、ミャンマー、2021年、25分)
『ドラム・レボリューション』は、ミャンマーの政権を掌握した国軍がクーデター
後に行った冷酷な殺人を証言している。このドキュメンタリーは、市民社会が立
ち上がって抗議した経緯をありのままに語り、団結して軍政に公然と抗議した
「ドラム・レボリューション」という団体に焦点を当てる。2021年3月初めにヤ
ンゴンとミャンマー全土を襲った混乱を現地から批判的に振り返る。
【コメント】長田紀之(アジア経済研究所研究員)
2.「心の破片/Broken」
(ナン・キンサンウィン監督、ミャンマー、2021年、12分)
ミャンマー東部のカヤー州の紛争地域では、女性や少女たちの生活は安全から程
遠い状態にある。見る者を引き込むこの短編ドキュメンタリーはキンサンウィン
の初監督作品である。監督は自分自身および自分と同じ村の出身の女性のトラウ
マを取り上げ、ミャンマー社会で女性に対する暴力を覆い隠す沈黙を破ろうとし
ている。
【コメント】久保忠行(大妻女子大学比較文化学部准教授)、アニサイ・ケオラ
(映画監督、Lao New Wave Cinema共同設立者)
3.「8月の手紙/August Letters」
(マイ・フエン・チー監督、スアン・ハー監督、ベトナム、2021年、26分)
VDP作品募集の知らせがもたらされたのは、ある映画作家が彼女の父親の命日を
追悼するとともに甥の誕生日を祝っていた8月のことだった。彼女は別の映画作
家に声をかけ、コロナが引き起こしたロックダウンという状況のもと、2人の共
通言語である映像を使って「死と生」のテーマに思いを巡らせた。このドキュメ
ンタリーは、2人の監督やその家族の私的な物語を織り混ぜながら、生と死の意
味を静かに思い、今日のベトナムの現代的な生き方や家族の関係を映し出す。
【コメント】加藤敦典(京都産業大学現代社会学部准教授)、山本博之(京都大
学東南アジア地域研究研究所准教授)
4.「リエンさんの造船所/Madame Lien’s Factory」
(グエン・トゥー・フオン監督、ベトナム、2021年、30分)
リエンは一家の三代目当主にあたり、彼女が受け継いだ造船所では伝統的な木造
船が作られている。メコン川沿いで100年近く続いているこの造船所は、激動の
時代を幾たびも経験してきた。今日、メコン川沿いでは持続可能な発展が目指さ
れるようになったが、それと同時に、都市が近代化するにつれて伝統的な価値観
が失われつつある。このドキュメンタリーの焦点は、リエンと、造船所の存続を
かけた彼女の努力にある。リエンはかつて自分が造船所を守るためにいかに奮闘
したかを思い出す。映画は、回想によって彼女の人生に意義が与えられる様子を
細やかに描く。労働者への思いやりを持った一人の人間、彼女と労働者の人間関
係、そして彼女を信頼して生涯ついて来た労働者の様子が心に迫る。
【コメント】岩井美佐紀(神田外語大学外国語学部教授)、ニック・デオカンポ
(映画作家、映画史家)
5.「黄昏/The Twilight Years」
(リリー・フー監督、マレーシア、2020年、22分)
『黄昏』は、高齢者が疎外される現代マレーシア社会での伝統的な家族の価値観
の崩壊を見つめたドキュメンタリーである。いずれ誰もが高齢になるが、2030年
にマレーシアの65歳以上人口は15パーセントに達することが見込まれている。私
たちがこの映画で見ることは、さほど遠くない未来の私たちの運命だろうか。本
作では、馴染み深い快適な家庭や自分が育てた子供たちから引き離され、老人介
護施設で自活を余儀なくされる急増する高齢者たちを丹念に追う。プチョン地区
にある介護施設で見ず知らずの人々に囲まれて徐々に年老いてゆくのは、かつて
父母や祖父母だった人々だ。この作品は彼らの物語を克明に描き、虐待・搾取や
ネグレクトの痛々しい物語を伝える。
【コメント】光成歩(津田塾大学学芸学部講師)、速水洋子(京都大学東南アジ
ア地域研究研究所教授)
【総評】
石坂健治(日本映画大学/東京国際映画祭シニア・プログラマー)
若井真木子(山形国際ドキュメンタリー映画祭)
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西芳実