11月18日の月曜日の18時よりZoomで11月の日本マレーシア学会(JAMS)例会を開催します。事前登録等はありません。
サラワク政治をテーマに、報告者として大室元氏(東京大学)、討論者に森下明子氏(同志社大学)をお呼びします。
詳細および、Zoomリンクは以下の通りです。皆様のご参加をお待ち申し上げております。
(情報担当追記:Zoomのリンクは日本マレーシア学会宛にお問い合わせください。
報告者:大室元氏(東京大学)
報告タイトル:ムスリムに導かれるサラワク政治:統一ブミプトラ保守党(Parti Pesaka Bumiputera Bersatu:PBB)の優位性とその展望
報告要旨:
マレーシア最大の州であるサラワクにおいては、独立後における僅か数年間のイバン人による統治を経て、マレー人及びムラナウ人から成るムスリムが支配する政治システムが構築された。その持続に関しては、商業伐採やプランテーション型農業といった熱帯林開発を温床とする利権ネットワークの存在が古くから注目され、事業ライセンスの発行権というある種のパトロネージを分配された体制内エリートの忠誠やまとまり、そしてその頂点に立つ州首相の役割が論じられた。州首相は、開発にかかわる閣僚ポストに自ら就くという人事を通じて、資源ポリティクスにおける実権を握る。しかし、なぜムスリムは行政の長である州首相を輩出し続けられるのか、という肝心のポイントは検討不十分である。
そこで本報告では、執政府におけるムスリムの主導的地位の前提である、統一ブミプトラ保守党(Parti Pesaka Bumiputera Bersatu:PBB)の優位性の実態を明らかにする。同党の強さは、ブミプトラ全体を支持基盤とする包括性はもちろん、浮動票に依存する華人系政党や多党化したダヤク系政党をはじめ、他党の構造的な弱さにも起因することを、2021年12月に行われた第12回サラワク州議会選挙のデータから確かめる。そして最後に、ブミプトラ内部における非ムスリムとの競合という点から、統一サラワク党(Parti Sarawak Bersatu:PSB)に注目する。新党であるPSBは、PBBの二次的な支持基盤であるダヤク人の支持を一部奪ったものの、今年3月にまた別の与党に合流・解党するという経過を辿った。PSBの事例から、PBBのライバルになれない非ムスリム系政党の弱さの理由を考え、今後への展望とする。
討論者:森下明子氏(同志社大学)