オンライン例会

東南アジア学会オンライン例会(従来の地区例会)5月のご案内です。
「多宗教社会におけるイスラム的正しさの模索」と題した企画を実施します、
皆様のご参加をお待ちしております。会員以外の方のご参加も歓迎いたします。
ご関心がありそうな方に本件お知らせいただけますと幸いです。

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「多宗教社会におけるイスラム的正しさの模索」
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【開催日時・場所】
日時:2022年5月21日(土)13:00-16:00
場所:Zoomミーティングでのオンライン開催
☆参加希望の方は、5月19日(木)までに以下のフォームからご登録ください。
https://forms.gle/y4vVABdpNt83R5D8A

【趣旨】
東南アジアにおいて、ムスリムであることの意味は、地域、国家、そして国境を超えた
ネットワーク等のなかで重層的に立ち上がっている。個々のムスリムが、あるいはムス
リムのコミュニティが、社会生活や宗教実践の現場で生じる具体的な課題に対応するこ
とは、同時に、重層的な準拠枠のそれぞれにおいて意味と解釈を生じさせることでもあ
る。イスラムに即した正しさの追求は、何を持って正しいとするかという枠組みの追求
でもあるという点で、常に多義性に開かれている。本研究会では、東南アジアの三つの
地域のムスリム社会において、イスラム的に正しくあろうとするムスリムたちの議論と
模索に注目し、その過程でムスリム同士の関係、またムスリムと非ムスリムとの関係が
どのように展開してきたのかを検討する。

【プログラム】
司会:山口裕子(北九州市立大学)
13:00-13:10 趣旨説明 光成歩(津田塾大学)
13:10-13:45 第1報告 光成歩
「新婦の同意による結婚:脱植民地化期シンガポールにおける婚姻法改革と
女性の権利をめぐる論争」
13:45-14:20 第2報告 西直美(同志社大学)
「『カウム・ムダ』論再訪:タイ深南部の村落部におけるビドアをめぐる
言説に注目して」
14:20-14:55 第3報告 大形里美(九州国際大学)
「インドネシアにおけるハラール認証制度の発展とムスリム少数派国に
生きるムスリムたち」
14:55-15:05 休憩
15:05-15:15 コメント1 多和田裕司(大阪市立大学)
15:15-15:25 コメント2 小島敬裕(津田塾大学)
15:25-16:00 総合討論

【報告要旨】
第1報告 光成歩
「新婦の同意による結婚:脱植民地化期シンガポールにおける婚姻法改革と
女性の権利をめぐる論争」

脱植民地化期のシンガポールで進んだムスリム婚姻法改革による変化の一つとして、婚
姻登録条項に着目する。1957年制定のムスリム条例において導入されたこの条項(第12
条第1項)は、夫だけでなく、妻を婚姻登録の主体として初めて明確に位置づけるもの
で、同時期のシンガポールのムスリム社会で議論されていた女性の婚姻における権利の
問題に対し、婚姻登録という行政手続きの整備によって試みられた改革である。立法過
程においてこの条項が論争化したことはないものの、1950年代のムスリム社会では、強
制婚や駆け落ち婚など、ムスリム女性の婚姻に際する権利、ならびに女性の婚姻に際し
ての父親ないし後見人の権利の揺らぎを示す事件が関心を集め、論争となっていた。報
告では、この論争の内容を分析し、婚姻法改革の経過と合わせて検討することで、この
条項に現れた変化について論じる。

第2報告 西直美
「『カウム・ムダ』論再訪:タイ深南部の村落部におけるビドアをめぐる
言説に注目して」

マレー系のムスリムが多数派を占める深南部は、タイからの分離独立運動が続いてきた
地域であり、イスラーム内部の思想潮流は研究史上の主要な論点とはなってこなかった
。タイにおけるカウム・ムダは、1980年代以降のイスラーム復興とりわけサラフィー主
義を指して用いられている。カウム・ムダの影響が拡大するとともに人々が耳にするよ
うになった言葉がビドアすなわちイスラームからの逸脱であり、イスラーム指導者の論
争は1990年代から2000年代にかけて社会で対立を生じさせた。本発表は、伝統が強く残
る村落部におけるビドアをめぐる言説を通して、カウム・ムダがどのように社会の亀裂
をもたらしたのか、そして、人々が伝統とイスラーム的正しさとの折り合いをどのよう
に模索しているのかを検討したい。

第3報告 大形里美
「インドネシアにおけるハラール認証制度の発展とムスリム少数派国に生きる
ムスリムたち」

日本国内ではコロナの影響によって、インバウンド客がストップしたことで、ハラール
産業への関心が薄れているが、ハラール認証を義務付ける法律を施行したインドネシア
においてはハラールにますます熱い視線が向けられ、「ハラール・ライフ・スタイル」
をスローガンに、ハラールを梃子に国の経済を発展させようとする経済ナショナリズム
の論調も目立つ。本報告では、近年ますます厳しくなるインドネシアやマレーシアのハ
ラール認証基準が、ムスリム少数派国に生きるムスリムたちにどのような影響を与えて
いるのかを明らかにする。本来、輸出向け製品にのみ適用されるべき厳格なハラール基
準を国内サービスにまで適用すべきとするハラール産業界関係者らの誤解、アルコール
に関するハラール基準についての無理解がムスリム少数派国におけるハラール対応を困
難にし、結果的にハラールに関心が高いが知識が不十分なムスリムたちを食の面で孤立
させている。

【問い合わせ先】
篠崎香織(九州地区理事)YRJ02374[at]nifty.com
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東南アジア学会地区理事
岩澤孝子、小座野八光、篠崎香織、菅原由美、菅谷成子、丸井雅子

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