東南アジア学会研究集会「ミャンマー情勢を読み解く」(9/1)のご案内

来る9月1日、「ミャンマー情勢を読み解く――歴史のなかの現在、比較のなかの地域」と題した研究集会をオンラインにて開催いたします。
プログラムの詳細が確定いたしましたので、ご案内いたします。
参加をご希望の方は、以下に示します事前参加登録フォームより期日中にお申し込みください。
東南アジア学会員/非学会員にかかわらず自由にご参加いただけますので、お誘い合わせのうえふるってご参加ください。

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「ミャンマー情勢を読み解く――歴史のなかの現在、比較のなかの地域」

【要旨・概要】
ミャンマーでは、2月1日に軍によるクーデタが発生してから混迷した状態が続いています。本研究集会は、こうした現状をアカデミックな視点から多角的に議論し、洞察を深めることを目的とするものです。具体的には、長年ミャンマーを観察・研究してきた方々に現状分析の報告(20分)をしていただき、各報告に対して、ミャンマー以外の東南アジア諸地域を研究対象とする近接分野の研究者に地域間比較の観点からそれぞれコメント(10分)をいただます。登壇者間の質疑応答に加えて、オーディエンスからの質問も受け付け、総合的に討論する時間も設けます。
※なお、「研究集会」は、東南アジア学会の大会が年1回になったことに伴う学会活性化の措置として新しく位置付けられた企画です。今回は、オンライン開催とし、オーディエンスはひろく一般に開いて実施いたします。

【開催日時・場所】
日時: 2021年9月1日(水) 13:00~17:00
場所: オンライン開催(Zoom使用)

【プログラム】(敬称略)
13:00 開会
13:05 趣旨説明 長田紀之(アジア経済研究所)
13:15 第一報告 伊野憲治(北九州市立大学)
「ミャンマー現代史に見る2021年「春の革命」の特徴」
コメント 増原綾子(亜細亜大学)
13:50 第二報告 南田みどり(大阪大学)
「文学的抵抗の変容―日本占領期の扱いを中心に」
コメント 福冨渉(ゲンロン)
14:25 第三報告 土佐桂子(東京外国語大学)
「クーデター下での市民の運動とネットワークの再編成」
コメント 山本博之(京都大学)
15:00 第四報告 髙橋昭雄(東京大学)
「ミャンマーの村は村落共同体にあらず」
コメント 小林知(京都大学)
15:45 総合討論
17:00 閉会
※発表タイトルおよび発表時間については、若干の変更がある可能性があります。

【参加方法】
以下の事前参加登録フォームより、8月29日(日)までにお申し込みください。
開催前日(8/1)に、ご登録いただいたメールアドレス宛にZoomのURL等の情報をお送りいたします。
https://forms.gle/AkVwnwKMcJc7xH2UA

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【報告要旨】
第一報告 伊野憲治(北九州市立大学)
「ミャンマー現代史に見る2021年「春の革命」の特徴」
2021年2月、国軍のクーデター、それに対する市民の抗議運動が動発生した。抗議運動に対する軍の武力弾圧によって、市民の犠牲者は8月4日現在900人を超える事態となっている。ミャンマーの現代史を考えれば、「春の革命」と言われているこの運動は、1988年の民主化運動の延長線上に位置づいたものと考えることも出来る。本報告では、「春の革命」と1988年の民主化運動(「8888」運動)を比較し、「春の革命」の特徴と今後のミャンマー政治の展望について考えてみたい。

第二報告 南田みどり(大阪大学)
「文学的抵抗の変容―日本占領期の扱いを中心に」
SNSで見ると、不服従の民による権力簒奪者への呼称として、「ファシスト(phethsit)」や「ちびポン(japu)」などの用語が目に付く。それらは日本占領期(1942-45)を連想させる。そこで本発表では、ビルマ文学に登場する日本占領期から今を読み解く鍵を探りたい。すなわち、日本占領期出版作品を起点に、戦後文学、50年代文学、60年代文学、70年代文学など各時代の文学が扱った日本占領期ならびに、その変容の意味するところと文学的抵抗のかかわりを確認したうえで、今に立ち返りたい。もの書く人々と権力とのせめぎあいは、今に始まったわけではないのである。

第三報告 土佐桂子(東京外国語大学)
「クーデター下での市民の運動とネットワークの再編成」
クーデター以降、市民の抵抗はZ世代に代表される柔軟で多様な形で展開し注目を集めてきた。こうした運動の特徴は、香港、タイなどの民主化運動、あるいは海外在住ミャンマー人との連携が重要であると同時に、明確な中心を作らず、国内での従来のネットワークの連続と再編のなかで生み出されたと考えられる。クーデターを契機とする包摂と排除のプロセスを経て、従来の市民ネットワークに生じている再編成のプロセスを知る手掛かりとして、医療ボランティア活動や宗教を含む教育改革運動などの例を通じて考察してみたい。

第四報告 高橋昭雄(東京大学)
「ミャンマーの村は村落共同体にあらず」
ミャンマーの村は、日本とは異なり、「村落共同体」ではない。本発表では、村落共同体とコミュニティ分析の理論的枠組みを提示し、両国の村落の社会構造の比較分析を行う。そのうえで、村はどのように「纏る」のかについて、そのメカニズムを解明する。
2021年の反軍政闘争が1988年の民主化運動と大きく異なるのは、ミャンマー人口の7割を占める村人たちがこれに参加しているという点である。ミャンマー村落の基本構造がこの運動形態とどのように関わるのかについても考えてみたい。

※参考までに各報告者の近著を挙げておきます。適宜ご参照ください。
・伊野憲治『ミャンマー民主化運動:学生たちの苦悩、アウンサンスーチーの理想、民のこころ』めこん、2018年。
・南田みどり『ビルマ文学の風景:軍事政権下をゆく』本の泉社、2021年。
・土佐桂子・田村克己編『転換期のミャンマーを生きる:「統制」と公共性の人類学』風響社、2020年。
・髙橋昭雄『ミャンマーの体制転換と農村の社会経済史:1988-2019年』東京大学出版会、2021年。

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東南アジア学会大会担当理事
津田浩司(tsuda[at]anthro.c.u-tokyo.ac.jp)

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