5月25日(土)関西地区例会のお知らせ

東南アジア学会関西地区5月例会の開催を以下の通りお知らせいたします。

今回は、カンボジアおよびマレーシアを中心とした近年の政治と社会の関わりを取り上げたパネル形式の例会となります。

オープンな会ですのでぜひご自由にご参加ください。事前登録などの手続きは必要ありません。

日時:5月25日(土)13:00-17:30
場所: 京都大学稲盛財団記念館 3階 中会議室
https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/access/

開場 12:30

第一報告(13:00-14:00)
発表者:山田裕史(新潟国際情報大学)
発表題目:カンボジアにおける権威主義体制の強化と2018年総選挙

要旨:2013年総選挙と2017年地方選挙で最大野党・救国党が躍進したカンボジアでは、2017年後半に救国党党首の逮捕と同党の解党、主要メディアの廃刊や閉鎖など、権威主義体制の強化と位置づけられる出来事が相次いだ。そして2018年総選挙では、フン・セン首相率いる与党・カンボジア人民党が76.9%の票を得て全議席を独占するに至った。
選挙に勝利して体制を維持するためとはいえ、欧米諸国による経済制裁が容易に予想されるなか、なぜ人民党政権は救国党を選挙過程から排除するまでに強権化したのか。その要因のひとつとして、多額の援助・投資・貿易によって人民党政権を支える中国の存在が指摘されているが、本報告では、2013年総選挙後から2017年地方選挙までの国内政治の動向に着目して上記の問いについて検討する。具体的には、野党勢力の取り込みと分断が今回は機能しなかったこと、および、人民党の常勝を支えてきた選挙操作が選挙改革によって困難となったことを指摘したい。また、2018年総選挙後の人民党と国軍の人事の分析から、フン・セン首相の長男への世襲と目される動きについても若干の考察を行う。

第二報告(14:00-15:00)
発表者:伊賀司(京都大学)・鷲田任邦(東洋大学)
発表題目:マレーシアの2018年政権交代と選挙監視運動

発表要旨:マレーシアでは2018年5月に実施された総選挙によって独立以来、史上初の政権交代が起こった。事前の選挙予測では、ほとんどの世論調査機関やメディアが与党連合の国民戦線(BN)の総選挙での勝利を予測していた。また、研究者の間でも2018年総選挙でのBNが勝利する確率は高いとみられていた。世論調査機関、メディア、研究者たちのBN勝利の判断の基準となっていたのは、BNによる長年の利益供与の構造とそれによって形成されてきた固い支持基盤、いわゆるゲリマンダリングといわれる選挙区割りの操作やそれによって生み出される一票の格差の問題、BNの意向に沿って活動する非中立的な選挙管理委員会や結社登録局などこれまで続いてきた野党に不公平な選挙の実態であった。
では、なぜ野党連合の希望連盟(PH)は大多数の事前予想を覆し、BNに勝利することができたのか。様々な議論が可能だが、本報告では2008年以降本格化していった選挙監視運動の実態とそれを率いてきた活動家、さらに選挙監視運動を受け入れていった政治・社会的な背景に注目して、マレーシア史上初の政権交代の要因の一端を解き明かしていきたい。報告では、あらゆる不正手段で延命を図るBNに対して、活動家を中心とする選挙監視運動がどのように生起・対抗し、そしてなぜ多くの市民を巻き込むうねりにつなげていくことができたのかを、質的・量的双方のデータを用いて検討することから、選挙監視運動が政権交代に与えた影響を考察する。さらに、マレーシアの事例を取り扱う本報告を通じて、政治学の理論面で2000年代に入って注目されてきた選挙権威主義体制および競争的権威主義体制といった体制の実態とその崩壊について理論的側面から理解を深めていくきっかけともしていきたい。

第三報告(15:10-16:10 )
発表者:岡田勇(名古屋大学)
発表題目:政府に対する抗議運動への参加ーボリビア、カンボジア、モンゴルのサーベイ比較ー

発表要旨:アジアよりもラテンアメリカの方が、抗議運動に参加する傾向が高いという説がある。本当だろうか。そもそも、国によって、人々が抗議運動に参加する傾向が異なりうるのだろうか。もし異なるとすればそれは何によるのだろうか。本報告では、人々の政府に対する認識が国によって異なり、それによって抗議運動に参加する傾向が異なるとの仮説を立て、それを複数国での独自サーベイによって検証することを試みる。2018年にボリビア、カンボジア、モンゴルで実施されたサーベイでは、歴史文化的背景、政党政治、現政権の継続期間、人々の政治参加のパターンなどが大きく異なる国でいかに比較検証が可能になるかを考える必要があったため、ヴィニエットを用い、質問票の一部をランダム操作するなどの工夫を行った。本報告では、3カ国での調査結果を報告するとともに、実際にサーベイを実施する上での苦労などについても話題提供する。

総合討論 16:10-17:30

東南アジア学会関西例会担当理事・委員
小林知、伊賀司、ピヤダー・ションラオーン、吉川和希、西島薫

Close Menu