1月25日(土)関西地区例会のお知らせ

新年の1月の関西地区例会を、以下の要領で行います。今回は、科研プロジェクト(基盤A「東南アジア大陸部宗教研究の新パラダイムの構築」代表:片岡樹、2016〜2019年度)の方々を集めて、ミニシンポの形式で行います。

5名の発表者による報告を通じて、大陸部東南アジアの宗教と社会の研究に関する多彩な動向を確認し、今後の可能性を議論する貴重な機会となります。ご多忙中と存じますが、皆様ご関心をお持ちの際はぜひお気軽にご出席ください。事前の登録などは必要ありません。

日時:1月25日(土)13:00-18:00

会場:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(吉田本部キャンパス、総合研究2号館、4階、カンファレンスルームAA463)

以下の地図をご覧ください。34番の建物です。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r_y/

プログラム

13:00 開会

13〜13:40 発表(1) 矢野秀武(駒沢大学)
「現代タイにおける宗教研究:中核的研究者リストの作成と分析」

13:40〜14:10 発表(2) 片岡樹(京都大学)
「タイ国の中国系寺廟の施餓鬼に見る仏教とエスニシティ」

14:10〜30 前半の質疑

14:30〜50 休憩

14:50〜15:30 発表(3) 長谷千代子(九州大学)
「文化的ハイブリッド状況についての再考:雲南省徳宏州の観音信仰を事例として」

15:30〜16:10 発表(4) 飯國有佳子  (大東文化大学)
「霊的存在の実在性とコミュニケーション:ミャンマーにおけるタイッの事例から」

16:10〜50 発表(5) 山本文子(国立民族学博物館外来研究員)
「趣味としての精霊信仰―上座仏教社会ミャンマーにおいて霊媒にとりうるもう一つの態度」

16:50〜17:10 休憩

17:10〜18:00 後半の質疑+総合討論

以上

ーーー以下、要旨ーーー

(1)矢野秀武(駒沢大学)
「現代タイにおける宗教研究:中核的研究者リストの作成と分析」

本発表の目的は、まず現代のタイ人宗教研究者、とりわけアカデミズムの中での代表的な研究者とその研究を取り上げ、基礎情報として提供することにある。また、近年注目されている比較的若手の研究者についての情報もこれに加える。次いで、これらの情報からタイ社会における宗教研究の特徴、ならびに宗教の社会的意味と宗教研究との関係を明らかにする。特に、タイの宗教研究において規範的かつ批判的な思想研究が重視される点に着目し、社会科学系が重視される国外のタイ宗教研究と比較し、宗教と宗教研究における社会的文脈の違いを考察する。

(2)片岡樹(京都大学)
「タイ国の中国系寺廟の施餓鬼に見る仏教とエスニシティ」

本報告では、タイ国の中国廟の施餓鬼供養に着目することで、公式には仏教施設と見なされない中国廟が、いかにしてタイ国家公認の仏教システムに包摂され、またそれが華僑華人エスニシティにどのように関わっているのかを考察する。中国廟の中には、施餓鬼など廟活動に大乗僧を受け入れ、仏教教団の施主として広義の仏教システムに組み込まれているものと、大乗僧ぬきで独自の式次第を維持するものとがある。では、大乗教団の施主となった場合、どのように儀礼が規格化されるのか。また、地域文化や華僑華人の方言集団文化(潮州、福建、客家など)は僧侶の関与の有無にどのような影響を受けるのか。本報告では、これらの点について検討を加えたい。

(3)長谷千代子(九州大学)
「文化的ハイブリッド状況についての再考:雲南省徳宏州の観音信仰を事例として」

漢族、ダイ(Tai,Tay)族などが暮らす雲南省徳宏州では、民族や仏教宗派の違いを超えて観音信仰が広まっている。その信仰の在り方には、上座仏教的伝統の強弱や漢語の普及程度、民族間交流の歴史などの条件によって、複数のパターンがあるように見受けられる。徳宏のこのような状況は、「漢化」「シンクレティズム」「ハイブリディティ」などの概念で表現されがちだが、そうした単純なラベリングでは多くの重要な論点を見過ごす恐れがある。本発表では各概念を論理的に腑分けし、静態的状況ではなく動態的過程に着目することによって、より深い現実理解を目指す。

(4)飯國有佳子  (大東文化大学)
「霊的存在の実在性とコミュニケーション:ミャンマーにおけるタイッの事例から」

本報告では、ミャンマーにおいて1990年代以降顕著になり始めたとされる霊的存在「タイッ」に関する言説や信仰を取り上げる。タイッのみを単独で扱う宗教専門家の不在や、民主化後爆発的に普及したSNSの利用もあり、タイッに関する言説や信仰は、雑多で時に相互に矛盾する多様な断片の集積体となっている。本報告では、コミュニケーションに着目しながら、何がどのようにタイッとして人々の間で受け止められるのかの一端を明らかにすることを目指す。

(5)山本文子(国立民族学博物館外来研究員)
「趣味としての精霊信仰―上座仏教社会ミャンマーにおいて霊媒にとりうるもう一つの態度」

上座仏教が主流のミャンマーでは精霊への悪いイメージゆえに霊媒は胡散臭いと見なされている。しかしヤンゴンには多くの職業的霊媒が存在し、独自の論理でその活動の仏教性を主張し、信者を集めている。霊媒への関与の仕方は二つあり、特定の霊媒の正統性を信じ、ほかの霊媒を拒絶する排他的信者と、特定の霊媒に入れ込まずに複数の霊媒の儀礼を趣味感覚で渡り歩く人々である。本報告では主に後者の態度―霊媒を胡散臭いと毛嫌いせず、かといってのめりこまない―に注目し、彼らの存在が仏教と精霊信仰の並存状況や霊媒のあり方にどのように関係するのかを考える。

以上

ご不明な点がありましたら、
西島(nishijima.kaoru.5c@kyoto-u.ac.jp)までご連絡ください。

東南アジア学会関西例会委員
小林知、伊賀司、ピヤダー・ションラオーン、吉川和希、西島薫

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