下記の通り、「白山人類学研究会」2025年度第2回定例研究会を開催いたします。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
□日時・場所 2025年6月30日(月)18:15~ 東洋大学白山キャンパス第2会議室(8号館中2階)
Zoomを使用したオンラインと対面とのハイフレックス方式にて開催いたします。 参加ご希望の方は以下のフォームからご登録ください。
https://forms.gle/dKA7jg6NzG8Ympcj6
アクセス用のリンクについては、例会前日までにご連絡差し上げます。
開始の5~10分前にログインしてください。
□発表題目 「水のゾミアを陸から読む―海と山から見る東南アジア辺境の動態―」
□発表者 片岡樹(京都大学)
□要旨
鈴木佑記の書評論文に「水のゾミア試論」というものがある。スコットの『ゾミア』を東南アジア海民研究の視点から読み直したものである。この「水のゾミア」をさらに陸の視点から読み直すことで、東南アジア社会の動態を、海と山の辺境からとらえなおすことができるのではないか。それが本報告のねらいであるが、ただしこれもまた、あくまで今後のモデル化に向けた試論である。
まずは海からの知見を山で読み直すことを試みたい。東南アジア海域研究からは、海賊と海のラジャの両義性、あるいは小型港市国家の可搬性などといった問題が提起され、それが周縁部における国家論の外縁を大きく広げてきた。また民族論に関しては、長津一史が東南アジア海域におけるサマ/バジャウ社会の特徴を、異種混淆性、周縁性、違法性などのキーワードで要約している。つまり合法と違法のグレーゾーンに移動性の高い様々な出自の人たちが集まり、国家権力と交渉することで、海域でのダイナミックな国際関係が展開されてきたということになるだろう。
以上の洞察は、おそらく内陸部山地においても当てはまる。本報告では雲南西南部からミャンマー、タイにかけての山地に居住するラフの事例に主に注目するが、そこではゾミア論では「非国家空間」と決めつけられたはずの場所にミニ国家が無数に存在してきたこと、その担い手はラフと呼ばれながらも実際には周辺のありとあらゆる民族集団からメンバーを調達し、国際関係のはざまを操作しながら自分たちの空間を維持してきたことが明らかになるはずである。
スコットが指摘しているように、東南アジアの山地は、平地国家からはじき出された無法者たちの巣窟としても機能してきた。そのことが山地での異種混交的な民族構成を生み出し、山地民と平地の無法者たちの同盟によって、平地からの干渉を拒否する独自の国家が形成されてきた。そしてそれら無法者たちの活動が平地国家の許容範囲を越えると軍事干渉を招き、そうすることで長期的には平地国家の版図が拡大されてきた。
実は今述べた点において山地と海域は並行関係にある。本報告の最後には、漢人不平分子の辺境への流入と辺境情勢の不安定化が結果的に平地国家の確立をもたらした点に関し、両者の並行関係を明らかにすることで、海と山で共振する東南アジア辺境の動態モデルへの考察を試みたい。
※本研究会は、人間文化研究機構海域アジア・オセアニア研究(MAPS)東洋大学拠点との共催です。
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