学会誌『東南アジア 歴史と文化』の改革について

東南アジア学会会員の皆様

こんにちは。第31期会長の小林知です。本日は、会員の皆様に、学会誌『東南アジア 歴史と文化』に関する改革をお知らせいたします。

東南アジア研究の国内における振興をはかり、学会活動の活性化を実現させることを目的に、今期の会長および理事会は、学会誌『東南アジア 歴史と文化』の編集・出版プロセスに、今年度から以下の3点の変更を加えることを決定しました。

今期の理事会では、まず1月に、4名の理事(太田淳、長津一史、増原綾子、山本博之)をメンバーとして、「学会誌改革ワーキンググループ」を理事会内に起ち上げました。ワーキンググループは、投稿する側にとってより魅力的な学術誌を目指し、J-Stageの機能を最大限に利用する形で改革案を検討してほしいという会長の依頼に答えて、改革案をまとめ、4月12日に開かれた第1回理事会に提出しました。理事会は、その内容を審議し、以下のような変更の基本方針を承認しました。

1)論文のWeb公開のエンバーゴ期間の廃止
これまで、学会誌には、2年間のエンバーゴ期間がもうけられていました。すなわち、学会誌の掲載論文は、紙媒体の学会誌に所収されるほか、そのPDF版がJ-Stage上で公開されてきましたが、後者がWeb上で公開されるのは、学会誌の刊行から2年後とされてきました。このようなエンバーゴ期間は、一般に、学会誌の販売収入を確保する手段として、出版社の便宜を踏まえて設定されるものです。また、会員が優先的に(非会員よりも早く)論文にアクセスする措置として理解する会員もいらっしゃったと思います。
しかし、学会誌『東南アジア 歴史と文化』は、48号(2019年5月刊行)をもって山川出版社との契約を終え、それ以後は学会が直接販売を管理する体制に移行しています。また、近年、国内外では学術論文のオープンアクセス化が急速に拡大しています。研究成果を、研究者コミュニティの外を含めた社会に広く発信して、公開する姿勢が市民権を得ています。科学研究費補助金を用いた研究成果を、オープンアクセス(OA)化する動きを推進し、研究者の研究成果に関する情報発信力を強化するという政府の政策も、その証左です。さらに、国内の他学会の学会誌においても、エンバーゴ期間を設ける例が少なくなっています。
以上を踏まえて、学会誌『東南アジア 歴史と文化』も、エンバーゴ期間を廃止することにいたしました。

2)採択後の早期公開(J-Stageの機能の活用)
学会誌の活性化のためには、投稿する側の希望をくみとった編集体制をつくる必要があります。この点の改革として、採択後の論文を、J-Stage上で早期にWeb公開する体制へ移行することにいたしました。
ご存知のように、学会誌はこれまで、9月末に投稿を締め切り、査読をへて、翌年の6月前後に刊行されてきました。刊行のチャンスが年に一度であるため、限られた期間に計画的に業績を積み上げることを重視する若手会員のなかには、別の学術誌へ原稿を投稿する動きもあったのではと想像されます。また、原稿が早期に採択された場合でも、それが日の目を見るまでに長く待たなければいけないケースもあったと考えます。望ましいことではありませんが、従来の編集体制では、査読が長期化した場合には、翌々年の刊行時期まで公表が先延ばしになる可能性も生じます。
以上のような状況を改善させることを目的に、学会誌『東南アジア 歴史と文化』では今後、J-Stageの早期公開機能を利用して、個別の論文が採択されたらまずWeb上でPDF版を公開する形に移行します(早期公開版PDFの公開)。該当の論文は、その後学会誌に所収されて刊行されます。刊行後は、Web上で公開されるPDFも最終版のファイルに置き換えられます。早期公開版と最終版のPDFは、同一のDOIをもち、同一の内容として扱われます。

3)編集の年間サイクルの変更
学会誌の活性化として、さらに、刊行の年間サイクルを見直すことにいたしました。
これまでの編集サイクルでは、9月末に投稿を締め切り、査読依頼を含めた編集作業に移ります。そして、翌年5月末〜6月の刊行を目指すという編集の年間サイクルでした。それを今後は、3月末に投稿を締め切り、12月末に学会誌を刊行するサイクルに改めます。
この変更は、12月の研究大会で自由研究発表やパネル発表を通じて研究成果を公表した会員や、12〜1月に修士論文や博士論文の形で論考をまとめた会員が、その内容を推敲して、学会誌に投稿しやすい状況をつくることをねらいとしています。

#重要事項#
以上の変更は、次号の55号から適用されます。すなわち、55号の編集日程は、2026年3月末に投稿締め切り、同年12月に刊行というスケジュールになります。しかし、今年の投稿を考えて、すでに準備を進めている会員の方々もおられると思います。よって移行期である55号に限っては、変更以前の投稿締め切り日である今年9月末にも投稿を受け付けます。つまり、2025年9月末と、2026年3月末という、2回の投稿締め切りを設けて、編集作業を実施します。

以上が、会長および理事会からのご連絡です。会員の皆様には、学会活性化を目指す試みの一環として、どうかご理解いただきたく存じます。

追って、編集担当理事から、今年度の学会誌の原稿募集に関するアナウンスがあります。会員の皆様には、そちらもご拝読いただき、ご理解をくださいますようお願い申し上げます。

小林 知
第31期 東南アジア学会会長

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