日本マレーシア学会(JAMS)4月例会(4月30日18時開始)のご案内

日時:2025年4月30日(水曜日)18:00~20:00

報告タイトル:シンガポールにおけるタウンカウンシルにみられる政治参加の機能

報告者:今井哲治(日本大学)

報告要旨:

本報告ではシンガポールにおいて人民行動党(People’s Action Party: PAP)が国民の政治参加をどのようにコントロールしているのかについて明らかにするために、地方組織の一つとされる「タウンカウンシル」の政治参加の機能に注目する。

シンガポールの地方組織は、各地域の住民における交流の場としてだけでなく、政府の地方機関やPAPの地方支部などの役割を担っている。住民は、このような特徴をもつ組織の活動に積極的に参加することで政治的な要求が可能になる。一方で、PAPは住民の政治的要求の場を自らの支配下にある地方組織に限定することで、国民の政治参加を管理している。

地方組織の一つとされるタウンカウンシルの場合は、その性質上、必ずしもPAPが支配することができるとは限らない。同組織は、選挙区をベースに設置され、各選挙区の議員が運営を担うことになっているため、選挙結果によっては野党が組織を運営することになる。タウンカウンシルは、地方組織の一つであるにもかかわらず、他の組織と異なる点が多く存在する。例えば、住民が直接、公営住宅の運営に関する政策決定に参加できるようになった点が挙げられる。これらの点からタウンカウンシルの政治参加の機能がもたらす帰結は、他の組織のものと異なると思われる。

しかしながら、タウンカウンシルが導入された1990年を境にシンガポールにおける政治参加に変化があったという指摘は見当たらない。その要因としては、次の二つの可能性が挙げられる。第一にタウンカウンシルには実際のところ、政治参加の機能がないという可能性である。導入時には、政治参加が謳われていたが、制度的には住民が参加する余地がしないことで生じる。この点について本報告では、制度導入の経緯や組織の構造から政治参加の機能があるのかどうかという点を検証する。

第二に、組織の自律性が低いという点である。タウンカウンシルは、これまでの点から他の組織と比べて自律性が高いと考えられるが、実際には制度的な要因や他の組織との関係性によって、自律性が低くなっている可能性である。PAPは、組織の自律性を低くすることで、他の地方組織と同様に政治参加を管理することができる。実際に野党が運営するタウンカウンシルを取り上げて、他の地方組織との関係性に注目することにより、同組織の自律性が低いということを示す。

本報告では、政治参加とは何かという点を明らかにしたうえで、シンガポールにおけるタウンカウンシルの事例を分析する。とりわけ、PAPは、タウカウンシルに政治参加の機能を持たせたものの、実際には自律性を低下させていることを明らかにする。

討論者:田村慶子(北九州市立大学)

※Zoomによる接続に関する情報は日本マレーシア学会までお問い合わせください。(東南アジア学会情報担当追記)

日本マレーシア学会(JAMS)

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