オンライン例会開催案内[11月1日(日)14:00-]

下記の要領で、東南アジア学会オンライン例会を行います。
参加ご希望の方は、10月30日(金)までに以下のフォームか
らご登録ください。

https://forms.gle/Y1VLfgz7ToqTLLpX6

例会前日に参加のためのZoomリンクをお送りします。

日時:11月1日(日)午後2時〜(5〜10分前にログインください)

第1発表(14時~15時15分)
平野綾香(大阪大学大学院)
「ベトナムランソン省チャンディン県ヌン語の頭子音の史的変化と声調の関係」

第2発表(15時20分~16時35分)
師田 史子(京都大学大学院アジア・アフリカ研究研究科)
「フィリピンにおける山下財宝の言説と宝探しの実践」

アフターセッション(午後4時半〜5時頃 参加自由)

*発表者あたりの時間配分は、発表(30分)/休憩+質問受付(10分)/  質疑
応答(30分)になります。

***以下発表題目および要旨***
第1発表
平野綾香(大阪大学大学院)
「ベトナムランソン省チャンディン県ヌン語の頭子音の史的変化と声調の関係」

発表要旨:Proto-Taiの*b-, *d-, *ɟ-, *g-, *ɣ-は現在のタイ諸語の多くで無声
音に合流しており、今回調査を行ったヌン語ランソン省チャンディン県方言でも
これらの有声音は無声化している。しかし、特定の環境下でProto-Taiの有声音
の痕跡が観察できる。ヌン語チャンディン県方言とPittayaporn (2009)による
Proto-Taiの再建形を比較すると、*b->p-/pʰ-, *d->t-/tʰ-, *ɟ->ʨ-/s-, *g->k-
/kʰ-, *ɣ->k-/kʰ-のように、Proto-Taiの*b-, *d-, *ɟ-, *g-, *ɣ-にはヌン語の
音素が2系列に分岐して対応している。Proto-Taiの*b-, *d-, *ɟ-, *g-, *ɣ-と
ヌン語チャンディン県方言の有気音およびs-が対応するのは、Proto-Taiの声調*
Bを持つ語である。すなわち、声調が*B以外の場合は*b-, *d-, *ɟ-, *g-, *ɣ-は
ヌン語チャンディン県方言でp-, t-, ʨ-, k-に合流するが、声調が*Bの場合はヌ
ン語チャンディン県方言のp-, t-, ʨ-, k-に合流せずにpʰ-, tʰ-, s-, kʰ-にな
っている。声調*Bを持つ語では、かつての有声音が無声有気音(*ɟ-は摩擦音)
になっているのである。この現象はヌン語の全ての方言で見られるわけではなく、
*b-, *d-, *ɟ-, *g-, *ɣ-が声調に関係なく全て一律に無声子音で対応する方言
も存在する。この事実は、ヌン語諸方言におけるチャンディン県方言の特異な位
置を示す重要な特徴である。

第2発表
師田 史子(京都大学大学院アジア・アフリカ研究研究科)
「フィリピンにおける山下財宝の言説と宝探しの実践」

発表要旨:本発表は、フィリピンの「山下財宝」をめぐる言説が農村社会におい
て確からしさを帯びていき、宝探しの実践へと至る過程を検討する。第二次世界
大戦末期に日本陸軍がフィリピンに財宝を埋めたという奇譚は、マルコス大統領
が財宝によって莫大な富を得たとの噂をきっかけにフィリピン社会において信憑
性を増した。しかし、その存在を担保する歴史資料はなく、山下財宝は「伝説」
の域を出ない。にもかかわらず、現在においても財宝の語りや宝探しの実践は農
村部の生活世界の中で日常的に繰り返されている。
財宝の存在が人びとの間で具体性を帯びていく背景には、閉鎖的な農村空間へ
の日本人や日系団体の来訪といった非日常的な経験や、日系人による日本人に関
しての日常的な語りの共有、そして外部からのラベリングなどが観察された。言
説の蓄積を経て不確かな財宝の存在に正当性が付与される中で、日本(人)のイ
メージは、経済的成功者でありかつ残虐な略奪者として再構築されていった。こ
のイメージを宝探しの駆動力としながら、人びとは山下財宝の存在に「きたるべ
き希望」を見出していた。

ご不明な点がありましたら田代( tashiroa[at]imc.hokudai.ac.jp  )までご連絡く
ださい。

田代、今村、岩澤、佐久間(北海道・東北地区)、田村慶子(九州地区)

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