北海道・東北地区例会案内(2月2日)

東南アジア学会員の皆様

北海道・東北地区例会を下記の要領で開催いたします。
事前申し込みは不要となっておりますので、皆様奮ってご参加ください。

今回は今年度提出された修士論文2本と、学生会員の博論についての発表となっ
ております。

日時:2月2日(日)、15:00~18:00(開場14:30)
会場:北海道大学国際広報メディア観光学院 メディア棟1階105
https://www.imc.hokudai.ac.jp/access/

■プログラム

15:00-15:15
澤井啓(北海道大学文学研究科修士課程)
「カリマンタン島におけるセンザンコウ・ヤマアラシ保全に向けた課題:先住民
族による猟の意味づけと重要性に着目して」

15:15-15:25 質疑応答

15:25-15:40
トゥティ アラウィヤー(北海道大学国際広報メディア・観光学院修士課程)
「北海道観光におけるムスリム対応の取組みに関する研究‐インドネシアとマレ
ーシアからのムスリム観光客を対象として‐」

15:40-15:50 質疑応答

15:50-16:00 休憩

16:00-17:00
西川慧(東北大学大学院博士後期課程)
「スマトラ島ミナンカバウ社会における人格観念ハティ―人びとの語りと儀礼の
分析から」

17:00-17:10
コメント(田代亜紀子・北海道大学メディア・コミュニケーション研究院)

17:10-18:00
質疑応答

*終了後、懇親会を予定しております。

■報告要旨

発表1
澤井啓(北海道大学文学研究科修士課程)
「カリマンタン島におけるセンザンコウ・ヤマアラシ保全に向けた課題:先住民
族による猟の意味づけと重要性に着目して」

本発表では、インドネシア・カリマンタン島S村において、希少種であるマレー
センザンコウとヤマアラシ3種を対象とした狩猟を行う先住民族狩猟者にとって
の猟の意味づけと、食料や家計収入等としての重要性を明らかにしたうえで、希
少種の効果的な保全策について考察する。発表者は2018-19年に112日間のフィー
ルド調査を実施した。結果、S村において狩猟とは生活に不可欠な活動であるこ
と、しかしヤマアラシ・センザンコウ猟は食料目的でなく、狩猟者は違法性を認
識しながらも意図的に狩猟し、そして不確実性を持った収入源であることが明ら
かになった。さらに希少種猟が発生するメカニズムを犯罪研究の手法である「日
常活動理論」の枠組みを用いて分析した結果、今後の保全策においては、地域社
会における生計向上への支援と、地域の慣習法への規則導入の二点が、地域社会
において受容性が高いと考えられた。

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発表2
トゥティ アラウィヤー(北海道大学国際広報メディア・観光学院修士課程)
「北海道観光におけるムスリム対応の取組みに関する研究‐インドネシアとマレ
ーシアからのムスリム観光客を対象として‐」

2012年以来、東南アジア諸国の訪日インバウンド観光客が増加し、受け入れ側で
ある日本ではムスリム観光客への関心が高まり始めた。それ以降、北海道をはじ
めとする各自治体では、ムスリム観光客対応の取組み(主に礼拝所とハラール・
フードの提供)が行われてきた。北海道におけるムスリム観光客対応の取組みは
既に7年間にわたって行われてきたが、アンケート調査から、インドネシア及び
マレーシアからのムスリム観光客は、この取組みに対する認知度が低いというこ
とが判明した。本研究の目的は、これまで北海道観光で行われてきたムスリム対
応の取組みの在り方や、その情報提供の状況を検証した上で、利用者であるムス
リム観光客がその取組みを利用する際に、どのようなバリアが発生しているかを
明らかにすることである。そのため、この取組みに関わっている様々な主体を対
象にインタビュー調査とアンケート調査を実施した。

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発表3
西川慧(東北大学大学院 博士後期課程)
「スマトラ島ミナンカバウ社会における人格観念ハティ―人びとの語りと儀礼の
分析から」

本発表の目的は、西スマトラ州の村落部に住むミナンカバウの人びとの人格観念
「ハティ」の特徴について、日々の生活の分析を通して明らかにすることである。
ハティとは身体部位としての肝臓を指す一方で、感情が生起する場としての「心」
も意味する。調査村落の人びとによれば、ハティに現れる感情は人間を正しい行
動へと導くものであり、他者からのいかなる干渉も受けない、個人の自律的な領
域として想起されている。一方で、ハティは村落における共同体的な規範の基礎
としても語られ、他者との結合点にもなっている。本発表では人びとの日常生活、
および人生儀礼の手順を決める話し合いを事例として取り上げることで、個人の
自律性と共同体の規範への服従という相反する価値観がいかにして相克されてい
るのか考察する。さらに発表の最後では、マレー世界における「ハティ」観念の
比較研究の可能性についても指摘したい。

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問い合わせ先:田代亜紀子(北海道大学)tashiroa@imc.hokudai.ac.jp

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