東南アジア学会関西例会(10月27日)のお知らせ

下記の要領で、東南アジア学会関西例会(10月17日、京都大学吉田キャンパス)を
開催します。ご参加をお待ちしております。

日程:2026年10月17日(土)
開場:京都大学吉田キャンパス本部構内 総合研究2号館 A447
(https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r-y の34番の建物の4階)

13:00 開場
13:05 開会
13:10-13:50 呂佳豪さん報告
13:50-14:00 下條尚志先生(神戸大学、オンライン参加) コメント
14:00-14:20 質疑
14:20-15:00 松岡怜奈さん報告
15:00-15:10 多賀良寛先生(大阪大学) コメント
15:10-15:30 質疑
15:30-15:40 休憩
15:40-16:20 北田瑞希さん報告
16:20-16:30 鈴木伸二先生(近畿大学) コメント
16:30-16:50 質疑
16:50 閉会

第1報告 呂佳豪
【報告タイトル】
班洪事件をめぐる地方政治体系の作動と変容-アワ山地西北部を中心に-
The Operation and Transformation of the Local Political System in the
Ban Hong Incident: Focusing on the Northwestern Wa Highlands
【要旨】
中国・ビルマに挟まれたアワ山地は、数世紀にわたり国家権力による直接支配が及ばなかった。1934年英領ビルマ会社は炉房銀鉱の開発を目指し、現地のワ族住民と武力衝突を起こした班洪事件により、アワ山地西北部は次第に国家の境界と叙事に組み込まれていった。本研究は班洪事件を中心に同地域の地方政治体系の構造と権力関係の変化を考察する。国家権力は地方社会に直接作用するのではなく、既存の地方政治体系内部の権力関係や利益関係のなかで展開し、相互作用するのである。18世紀以降、アワ山地西北部では政治単位間の資源分布や各単位内部の社会勢力関係には不均衡が生じていた。班洪事件が発生すると、体系内外の諸勢力が権力と利益をめぐる駆け引きをした。その結果、班弄は新たな地域中心および地域的強権を形成したが、持続的な支配関係へは至らなかった。これに対して班洪は、多様な権力資源を吸収し、1940年代以降、班洪王を中心とする新たな権威体系を形成した。

第2報告 松岡怜奈
【報告タイトル】初期在仏アンナン語教育におけるキリスト教テキストの初歩的分析
【要旨】
本研究はフランスによるインドシナ植民地統治の方法と特徴を理解するために、その初期
段階でフランス人幹部候補生向けに行われたアンナン語(ベトナム語)教育がどこで・誰によって・どのように展開されたのかを考察し、インドシナ史研究として位置づけるものである。1795年に設立されたパリの東洋言語学校(École des langues orientales vivantes)は、フランスによるコーチシナ(ベトナム南部)支配開始後、1871年にアンナン語講座を開講した。初代教員アベル・デ・ミシェル(Abel des Michels)は、ハンノム(漢字・チュノム)とクオックグー(ベトナム語のローマ字表記)を並行して教授した。発表では主に以下の史料を取り上げる。宣教師ピニョー・ド・ベーヌ(Pigneau de Béhaine)が1774年に著した“Thánh giáo yếu lí quốc ngữ 聖敎要理國語”のクオックグー版(1847年)とハンノム版(1866年)、ならびに宣教師J.M.Jが1867年に発行した“Sách gẫm ba mươi mốt điều”(『三十一の教え』)である。本発表では東洋言語学校のアンナン語講座で使用されたキリスト教テキストや関連史料の初歩的分析を通じて、先行研究ではまだ十分に議論されたとは言い難い、関係者間の学術ネットワークや在仏アンナン語教育の実態の一部を明らかにする。

第3報告 北田瑞希
【報告タイトル】
20世紀初頭における仏領インドシナの公衆衛生行政: 地方への展開を中心に
【要旨】
20世紀初頭の仏領インドシナでは、医療・公衆衛生施策の整備が進められるとともに、その活動範囲は主要都市から地方へと広げられていった。しかし、こうした地方への展開は、主要都市を中心に整備された医療施設や公衆衛生施策が各地へ一様に拡張する過程としてのみ捉えることはできない。トンキン、アンナン、コーチシナ、カンボジア、ラオスでは、行政のあり方や人口・地理的条件、医療人員・施設の配置等が異なり、公衆衛生行政の地方への展開の程度や実施形態にも差異がみられた。本報告では、年次報告書、官報に加え、総督府と各地域の行政機関との往復文書、地方医療・衛生事業の実施状況に関する報告書等を用いて、医療施設、人員配置、移動型サービス、感染症対策などの地方への展開を跡づける。そのうえで、公衆衛生行政の地方への展開が一様に進められたものではなく、地域によってその程度や実施形態を異ならせながら進められた過程であったことを示す。

関西例会担当(岡本正明・久納源太・松村智雄)

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