東南アジア学会11月関西例会を次の通り開催します。
皆様のご参加をお待ちしております。会員以外の方も歓迎します。
参加希望の方は下記の登録フォームからお申込みください。
(情報担当追記:登録フォームは最下部のメールアドレス宛にお問い合わせください。)
【開催日時】2024年11月16日(土)13:30 〜16:50
13:30~14:10 第一発表
14:10~14: 20 コメント
14:20~15: 00 質疑応答・ディスカッション
15:20~16:00 第二発表
16:00~16:10 コメント
16:10~ 16:50 質疑応答・ディスカッション
【会場】京都大学吉田本部キャンパス 総合研究2号館4階 第1講義室(AA401)
【プログラム】
*第一発表者
発表者:遠藤総史(中央研究院歷史語言研究所(博士後研究學者))
発表題目:宋代の朝貢における中部ベトナムの政治的ハブ機能
発表要旨:
本報告は、朝貢をはじめとする宋朝と南の海域世界との関係における、中部ベトナムの政治的なハブ機能について検討するものである。10世紀以降、中部ベトナムはマラッカ海峡と中国東南沿岸部を結ぶ海上ルートの結節点として発展し、その中で海上貿易などの経済的側面から中部ベトナムの重要性が指摘されてきた。これに対し本報告では、対中関係における中部ベトナムの政治的機能について検討したい。
報告では、まず1205年の真里富国の朝貢に注目する。この朝貢では、真里富国が使節を中部ベトナムのヴィジャヤ(新州)に派遣し、宋朝側と打ち合わせを行ったうえで海商(大朝綱首)と共に入朝している。この朝貢の検討を通して、中部ベトナムが政治的なハブとして機能していたことを指摘する。
次に、中部ベトナムが朝貢において持つ政治的機能について検討する。具体的には、1050年1月の占城国(チャンパー)の朝貢と、1048年10月の塗渤国の朝貢で提出された外交文書の類似性に注目する。また、中部ベトナムと中国の間で活動する海商に注目し検討を行う。これにより、中部ベトナムには外交文書の作成など中国へのアクセスを請け負う人間集団が存在した可能性を提示する。
最後に、南北朝時代における中部ベトナムでの外交文書の作成や、元代における行中書省(占城行省)の設置など、前後の時代との繋がりの中に上記の政治的ハブ機能を位置づけて検討し、それによって、南北朝時代以降中部ベトナムは政治的ハブ機能を強化していき、次第に朝貢などにおける中国の準公式的な窓口機関として機能するようになったと結論づける。
コメンテーター:向正樹(同志社大学)
*第二発表者
発表者:松崎准(大阪大学大学院人文学研究科博士前期課程)
発表題目:フィリピンのブラック・ナザレーン信仰における宗教コミュニティーHijosの信仰実践−教会と信徒の枠を超えた信仰運営の日常
発表要旨:
誰がカトリシズムの信仰実践を現代フィリピンにおいて保護してきたのだろうか?先行研究群は信者が土着の信仰と正統カトリシズムを日常的に選択しているという下からの説明(Cannell 2006、川田 2009、Bautista 2010など)と、制度教会が宗教的規範を社会的に機能させるべく信仰の正統性を監督しているという上からの説明(宮脇 2003など)を試みてきた。しかし、マニラ首都圏キアポでのフィールドワークによる帰納的なインタビュー調査から、本研究では、ブラック・ナザレーン信仰の事例においては、教会の教理教育を受けた監督者であり、かつ熱心な信徒からなる中間コミュニティ「Hijos」の重要性を明らかにした。Hijosは、教会と信徒からは独立した運営方法で、信徒の信仰生活を指導し、街の治安を維持し、聖像を守るというミッションを、主体的に遂行することでカトリシズムの規範と実践を保護している。彼らは聖職者や一般信徒ではない「中間コミュニティ」であり、彼らの重要性を指摘することで本研究はそれぞれの先行研究を架橋することを目指す。
コメンテーター: 片岡樹(京都大学)
【お問合せ】morota.fumiko.8p[at mark]kyoto-u.ac.jp
東南アジア学会関西地区担当委員 師田史子