9月28日(土)関西地区例会のお知らせ

2019年9月28日(土)に開催いたします東南アジア学会関西地区例会につきまして、以下の通りお知らせいたします。

オープンな会ですのでご自由にご参加ください。なお事前登録などの手続きはありません。

日時:9月28日(土)13:00-18:00
会場:大阪大学豊中キャンパス全学教育推進機構 ステューデント・コモンズ2階 セミナー室C
アクセス:https://www.celas.osaka-u.ac.jp/facilities/

 

第一報告(13:00-14:30)
発表者:森哲也(特許業務法人日栄国際特許事務所 / 日本大学大学院司法研究学科博士後期課程)
発表題目:シンガポールにおける知的財産制度の意義
発表要旨:シンガポールは建国以来「中継貿易」による「貿易立国」で発展してきたが、原材料を輸入しこれを加工して輸出するオントレプレナー貿易に進化し、それによって、「商業国家」の体質から現在の輸出志向型工業化が図られた。この工業化は、政治権力と政府主導経済による「開発体制」の展開で、「テマセク国営企業群」とFDI及びMNCsの導入とによって行われ、シンガポール内国人がすそ野広く寄与することはなかった。ここで展開されている「開発体制」は、3代続いた絶対権力者が政治権力と政治主導経済の推進によるものであるから、「法の支配(rule of law)」は「法による支配(rule by law)」に後退する。シンガポールは、アジアの「IPハブ」たることを宣言してIP制度を整備した。IP制度は、元来その国の内国人にIP創出をさせることにより産業の発達を期するのであるが、この国の制度設計と運用は、FDIやMNCsの活動の「交通整理」手段にしか過ぎず、諸点での改革が望まれる。

第二報告(14:45-16:15)
発表者:二重作和代(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
発表題目: 観光にみる地域文化の変容と表象:インドネシア錫鉱山地域の事例
発表要旨:観光の場において、地域文化は観光資源として売り出される。観光客のまなざしが、地域文化の形成への反省をもたらすことはしばしば議論されてきた。しかしながら、多民族地域において地域独自の文化が発展する過程に焦点を当てた議論は少ない。本研究の目的は、地域住民が主導となって進められる観光開発を通して、地域文化がどのように変容し、観光の場で表象されるようになってきたかを明らかにすることである。本研究では、インドネシアのバンカ・ブリトゥン州を事例に現地調査を実施した。調査によって、同州の人口の7割以上を占めるムラユ人だけでなく、華人などのエスニック・グループの文化が、観光の場で頻繁に表象されるようになっている様相が明らかになった。多民族地域における観光では、各民族の文化が分断化された状態で表象されることが多いが、本調査によって、同州を構成する多民族文化の混交および独自の文化の形成が推察できた。

第三報告(16:30-18:00)発表者:師田史子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
発表題目:フィリピンにおける賭博の規制と管理の変遷
発表要旨: 本発表は、賭博撲滅政策とは裏腹に、なぜフィリピンにおいて100年以上にわたって違法賭博が持続してきたのかを、規制と管理制度の変遷から検討する。賭博産業は、莫大な利益をもたらす市場としてフィリピン社会に影響を及ぼしている。この賭博産業の繁栄には、スペイン植民地期に端を発した国家による干渉と規制の歴史が存在する。フィリピン人の「未開性」の象徴であった賭博の営為は、白人の責務を負ったアメリカ植民地政府によって厳格な規制・管理が始まった。しかし、植民地期から独立以降、賭博を規制する立場にある政治・警察権力からの庇護によって違法賭博はフィリピン全土に蔓延し続けた。この経緯には、賭博の規制・管理の変遷が、国民のモラル改善を建て前とした賭博の利益の権力者間の分配をめぐる歴史であったこと、違法賭博の持続力は賭博者だけでなく、権力構造によっても支えられてきたことが挙げられる。公権力の問題意識は、「賭博」自体の社会悪性から、「違法賭博」の蔓延による闇経済の拡大へと移行していった。

ご不明な点がありましたら、吉川(jichuan_hexi@yahoo.co.jp)までご連絡ください。
東南アジア学会関西例会委員小林知、伊賀司、ピヤダー・ションラオーン、吉川和希、西島薫

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